コーヒーについては、豆の焙煎までしないと気がすまないとかそんな、五月蝿いほどではないにせよ、最近再び凝り始めたもの。
昔は、それほど詳しくも無く、ただ適当に、マンデリン種の安売り豆を挽いてもらって、カリタで濾過して飲んでたのを、イタリアのボイラーを買ってもらいの、エスプレッソ風なものをやってみたりと、正統ではないにせよ、コーヒーを愛し、日々の生活に取り入れていたものだった。
思えば従兄弟が家族にコーヒー豆を挽き、淹れて振舞うのが好きな時分(もう30年くらい昔)に、母親の趣味だろうか毎朝ミルクティーに漬かったような生活であり、コーヒーには憧れを持っていたに違いない。
当時は、ネスカフェ全盛期というか、ネスレといわず、ネッスル日本であり、日曜の映画には、淀川長治のトークとネッスル日本のCMがはいって、日焼けの美女が水着姿でアイスコーヒーを飲むシーンが格別記憶されている。 また当時は180日間のネッスル日本のレトルト牛乳が売られていて、飲んでいた記憶がある。 180日間も保管が効く牛乳(ロングライフ)は、かなり後、つまり最近聞いた話であるが、ヨーロッパの牛乳生産者たちが調べたところ、マトモな牛乳の風味ではない独自のものであるという見解があったそうである。 超高温殺菌とアルミ封止したブリックパックは、もちろんスウェーデン・テトラパックからもたらされた技術であり、純然たる日本の技術だけで出来ているものではないのだが、あの風味が70年代後半から80年代前半の私の牛乳のイメージだったかもしれない。 後に私の母は、当時はやり始めた生協からの牛乳に鞍替えして、家の冷蔵庫にある高温殺菌の牛乳が一気に低温殺菌の牛乳になったときは(もちろんネッスル日本が牛乳販売から撤退したのが先だったのだが)、牛乳の再発見が起きたのは90年代になってからだろうか。
もちろん、こどもの国やマザー牧場のような観光酪農園で試すことの出来る生乳の生々しさにかなう物ではなかったが、私自身の購買癖の一つに数えられるものとして、こと牛乳に関しては、まず足したり引かれたりしたものは論外、安売りされていない、低温殺菌の牛乳を購入することが非常に多くなった。 これらの牛乳はめったに200円・リッターで売られることが無いし、手に入るところも少ない。 ジャージー種の牛乳、小岩井の4.2や、8.2調整牛乳の次に高くて希少な牛乳なので、下手なスーパーには無いものの、ちょっとした規模なら1個くらいおいてある。 この牛乳を手に入れるために、少し離れた店まで行くのを家内は厭うのだ。 そりゃ、近くのコンビニの牛乳は安いし、すぐ買って帰れるから、その気持ちは判るが・・・
コーヒーに話を戻すと、10年ほど前から日本でシアトル風カフェが流行り始めた頃でも私はあまり寄りつかず、入る店はどちらかといえばドトール的な店を好む方だった。 タバコが吸えないのも関わらず・・・である。 もちろんドトールでコーヒーを飲むのが好きなのではなく、ただコーヒーが飲みたかっただけであるが、最近外でコーヒーを飲む気がしないのは、コーヒー一杯に用いられる豆の量が関係するのかもしれない。 昔からサイゼリアを愛用する理由の一つに、セルフのエスプレッソメーカーがあるが、このコーヒーメーカーの毎回毎回エスプレッソで使われる豆の量は当然決まっている。そして自分はこのエスプレッソをダブルで、つまり二回連続で機械を占領しナミナミとカップに注ぎ淹れなければ気がすまない、バカのように濃いコーヒーの好きな人間である。タリーズが近くに出来たときも当然のように試したが、やはりトリプルとかダブルのエスプレッソを最初に試した位の濃いコーヒー好きなので、普通のコーヒーショップでは物足りないのかもしれない。 だが、バリスタを買ったりするほどのもの好きでもない・・・そもそもボイラ式の金気臭さに最近ボイラーを使うことは無くなり・・・、やはり昔懐かしいカリタ(フィルター)で淹れるコーヒーに戻ってしまった。 自分の飲む豆の量をキチンと数えて飲んでいたベートーヴェンの時代と違い、かなり奢って豆を使うのだ。
以前、コーヒー豆を購入する場合、スーパーでやむなく買う場合や、専門店で気張って買う場合の二通りしかなかった私も、3つ目の選択肢ができた。 帰りがけに立ち寄る大鳥居の商店街でやっている、小さなコーヒーショップがそれで、喫茶もできる専門店として構えているのに、最初に入ったときから商売っ気があまりないような変わった店だったのだ。 店の親父がなんとも生真面目に豆を選別して、最も安いブレンドで、グラムあたり2.50円という格安な店だった。 もちろんスーパーで買ったり、実家の近くだと日本茶の店の片隅で売られていた1kg1300円前後の格安豆なんかよりは高いが、すかした専門店なら、100g/500円程度が普通だったのである。
その店の名前は、”豆の木”といって、大鳥居の商店街のはずれにあるが、この店の主人は、コーヒーのことに付いては、次のように語る。
- コーヒーの味はコーヒーの産地より、焙煎の度合いの要素が大きい
- 豆の中に、少しでも混じると味が極端に悪くなるものがある。これを避けるのも仕事。
- 豆の産地と銘柄は、実際に一致しなくなりつつある。
私の仕事・取引先に、コーヒー関連の貿易をやっているところがあるが、こういうところで縦線と横線が合うところが実に面白い。
最近出来たコーヒーハウスというか、食事も取れるところにアンジュという店がある。もちろんこれもコーヒーが売りなのであるが、ここはブラジルのコーヒーしか出さない。 この店の話は、今後しばしば書くことになるだろう。